連載①:断熱とは何か——「家の快適さ」と「光熱費」を決める基本

「断熱(だんねつ)」は、家の中と外の“熱の出入り”を減らすことです。冬は室内の暖かさが外へ逃げにくくなり、夏は外の暑さが室内へ入りにくくなります。結果として、少ない冷暖房で快適な温度を保てます。
断熱を“服”に例えると分かりやすい
家を人間だとすると、断熱は「防寒着(コート)」です。
- 断熱が弱い家:薄着で冬に外へ出る → すぐ寒くなる → 暖房を強くする
- 断熱が強い家:しっかり着込む → 体温が逃げにくい → 少ない暖房で済む
この理屈は夏も同じで、冷房した涼しさが外へ逃げにくいので、効率が上がります。
なぜ今、断熱が重要なのか
理由はシンプルに3つです。
- 光熱費の問題
エネルギー価格が上がるほど、「家のつくり(断熱)」が家計に効きます。 - 快適さの問題
同じ室温設定でも、断熱が弱いと“寒い・暑い”を感じやすくなります。特に窓まわりや廊下が典型です。 - これからの“当たり前”が変わった
日本では、2025年4月から新築住宅は省エネ基準に適合することが原則義務になりました。つまり、これから建つ家は「一定以上の断熱」が前提になります。国土交通省+1
さらに国の方針として、2030年度以降はZEH水準の省エネ性能が新築の標準になる方向が示されています。
日本での「断熱の一般的な認識」はどうだったか
率直に言うと、日本では長い間、家づくりの優先順位がこうなりがちでした。
- 見た目、立地、間取り、収納、設備(キッチン等)
- その次に、断熱(=目に見えないので後回し)
断熱は“完成後に見えない”ため、価値が伝わりにくい。一方で、住み始めてから毎月効いてくるのは断熱です。ここに、これまでのギャップがありました。
ただし今後は、制度面でも市場面でも、断熱は「オプション」ではなく「基礎条件」へ移行します。
まず一般の方が押さえるべきポイント
断熱を理解する最短ルートは、次の1行です。
断熱=冷暖房の効きが良くなる家の“体質改善”。
そしてチェックの目安は日常の体感です。
- 冬、暖房しても廊下やトイレが極端に寒い
- 窓の近くが冷える/暑い
- エアコンを切ると一気に室温が戻る
- 部屋によって温度差が大きい
当てはまるほど、「断熱で改善する余地」が大きい可能性があります。

